2016年04月01日
媒介業者による暴力団事務所の存在の説明について
*本事例は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構発刊の「不動産売買トラブル防止の手引」から転載しています。
◆◇◆ 相談・紛争事例等より ◆◇◆
○相談の内容:媒介業者による暴力団事務所の存在の説明について
個人の売主から中古住宅の売却依頼を受けて買主と売買契約を成立させたのですが、引渡しから約1か月後、買主から、「50メートルほど離れたビルに、暴力団事務所があることを聞いた。そんな説明は受けていない。知っていれば購入しなかった。手数料を返還し購入金額で買い取ってほしい」と要求されてしまいました。売主に確認したところ、「そのビルに暴力団事務所があるというウワサは聞いているが、これまで何か問題が起きたことはないので、確認したこともない」ということだったので、買主に売主の話を伝えたうえで「暴力団事務所があることは知らなかった。説明責任はないと考えている。買い取ることはできません」と答えました。
買主は、媒介業者として重大な調査・説明義務違反があると主張しています。
○事例の考え方
暴力団事務所が近くにあることを知った場合、買主は当該物件の購入をしない判断をするのが通常といえます。暴力団事務所の存在は、環境または心理的瑕疵に当たり、媒介業者がその存在を知っていた場合には、「取引の判断に重要な影響を及ぼす事項」として説明する義務があります。また、暴力団事務所の存在をウワサ等により知り得る状況にあるときは、調査の上、事実関係を確認する義務が生じます。しかし、媒介業者には、暴力団事務所の存在について、買主からその存在の有無について調査の依頼を受けるなどの特段の事情がない限り、積極的な調査義務まではないと解されています。
本件媒介業者の調査・説明義務:当該ビルに暴力団員と思われる者等の出入りが頻繁にあり、暴力団事務所の存在を疑わせる状況があるなどの特段の事情がない限り、媒介業者に積極的な調査義務はないと解されていますので、暴力団事務所の存在を知らず、知り得なかった本件媒介業者には調査・説明義務違反はないと考えられます。
売主の瑕疵担保責任:売主は、当該ビルの中に暴力団事務所があるウワサを聞いていましたが、特に問題が生じているわけでもないことから、確認もせず、買主にも告げていません。当該ビル内に暴力団事務所があることが事実である場合、暴力団事務所の存在は取引物件の瑕疵に当たるといえますので、売主に瑕疵担保責任の問題が生じます。
売主の瑕疵担保責任は無過失責任ですので、売主が暴力団事務所の存在を知っていても知らなくても、その責任を負うことになります。
買主は、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく契約解除権、損害賠償請求権がありますが、過去の裁判例では、買主に契約解除権までは認めず、損害賠償のみを認めています。
暴力団事務所の存在をめぐる過去の裁判例(東京地裁平成26年4月28日判決、同11年6月15日判決、同平成7年8月29日判決等)については、RETIO判例検索システムをご参照ください。
(担当:金子)
*本事例は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構発刊の「不動産売買トラブル防止の手引」から転載しています。
◆◇◆ 相談・紛争事例等より ◆◇◆
○相談の内容:媒介業者による暴力団事務所の存在の説明について
個人の売主から中古住宅の売却依頼を受けて買主と売買契約を成立させたのですが、引渡しから約1か月後、買主から、「50メートルほど離れたビルに、暴力団事務所があることを聞いた。そんな説明は受けていない。知っていれば購入しなかった。手数料を返還し購入金額で買い取ってほしい」と要求されてしまいました。売主に確認したところ、「そのビルに暴力団事務所があるというウワサは聞いているが、これまで何か問題が起きたことはないので、確認したこともない」ということだったので、買主に売主の話を伝えたうえで「暴力団事務所があることは知らなかった。説明責任はないと考えている。買い取ることはできません」と答えました。
買主は、媒介業者として重大な調査・説明義務違反があると主張しています。
○事例の考え方
暴力団事務所が近くにあることを知った場合、買主は当該物件の購入をしない判断をするのが通常といえます。暴力団事務所の存在は、環境または心理的瑕疵に当たり、媒介業者がその存在を知っていた場合には、「取引の判断に重要な影響を及ぼす事項」として説明する義務があります。また、暴力団事務所の存在をウワサ等により知り得る状況にあるときは、調査の上、事実関係を確認する義務が生じます。しかし、媒介業者には、暴力団事務所の存在について、買主からその存在の有無について調査の依頼を受けるなどの特段の事情がない限り、積極的な調査義務まではないと解されています。
本件媒介業者の調査・説明義務:当該ビルに暴力団員と思われる者等の出入りが頻繁にあり、暴力団事務所の存在を疑わせる状況があるなどの特段の事情がない限り、媒介業者に積極的な調査義務はないと解されていますので、暴力団事務所の存在を知らず、知り得なかった本件媒介業者には調査・説明義務違反はないと考えられます。
売主の瑕疵担保責任:売主は、当該ビルの中に暴力団事務所があるウワサを聞いていましたが、特に問題が生じているわけでもないことから、確認もせず、買主にも告げていません。当該ビル内に暴力団事務所があることが事実である場合、暴力団事務所の存在は取引物件の瑕疵に当たるといえますので、売主に瑕疵担保責任の問題が生じます。
売主の瑕疵担保責任は無過失責任ですので、売主が暴力団事務所の存在を知っていても知らなくても、その責任を負うことになります。
買主は、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく契約解除権、損害賠償請求権がありますが、過去の裁判例では、買主に契約解除権までは認めず、損害賠償のみを認めています。
暴力団事務所の存在をめぐる過去の裁判例(東京地裁平成26年4月28日判決、同11年6月15日判決、同平成7年8月29日判決等)については、RETIO判例検索システムをご参照ください。
(担当:金子)
*本事例は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構発刊の「不動産売買トラブル防止の手引」から転載しています。
Posted by TFC会 at 10:20│Comments(0)
│◎不動産の知恵袋